【杉山智行のブログ】将来、海外融資型のクラウドファンディングをやりたい大学生が読んでおきたい4冊
自動車産業では賃金の低い新興国で車を作ることが常識になってきているように、銀行業界でも融資をリターン/リスクのプロファイルが日本よりいい海外で行うことがこれからは常識になってきます。
その中で、海外融資型のクラウドファンディングをやってみたいと思う学生も増えてくるのではないかと思い、そういう方が入門書として読んでおいた方が良いと思う本や資料を習得したいポイントに沿って4冊ほど紹介します。
?いきなり大学を卒業して海外融資型のクラウドファンディング事業を始めることはありえないので、そういうことに興味がある場合は銀行に就職することになるかと思います。
銀行に就職して、国境をまたいだ事業を行う際に、まずおさえておきたいポイントとしては、以下の4つがあります。
1. 世界でお金はどう循環しているのか
2. 銀行のバランスシートの状態はどうなっているのか
3. 銀行にかかる法規制
4. 通貨スワップ市場の動向
「1. 世界でお金はどう循環しているのか」
という点に関しては、お金も川の水のように流れというものがあり、それが今現在どこからどこに流れているのかを理解する必要があります。
世界というよりは日本にフォーカスされていますが、『危機は循環する―デフレとリフレ」(白川 浩道(著))が、どういう事項がお金の流れに影響を及ぼし、現時点ではそれらがどういう状況にあるのか、分かり易かったです。
「2. 銀行のバランスシートの状態はどうなっているのか」
ですが、自分が勤務している銀行の状況によってやるべきことは全く変わってきます。
これはそんなに難しいことではなく、単純に、預金が足りない銀行では預金集めが至上命題、貸出が足りていない銀行は貸出増が至上命題、預貸のバランスが取れている銀行では不採算事業を切り離して採算の取れる事業を拡大する、という3パターンがあるだけです。
この点を理解するには、本ではなく大きな銀行のディスクロージャーを読むのが手っ取り早いです。
自分が好きな銀行の名前プラス”IR”で検索をかければだいたいでてきます。
僕の前職で所属していたロイズ銀行を例にだすと、Annual Reportや投資家向けのプレゼンテーション資料をみるとイメージ湧いてくると思います。
「3. 銀行にかかる法規制」
に関しては、僕が一昨年の12月に銀行を辞めた後に、規制もめまぐるしく変わっています。
当社は銀行ではないので、銀行に対する法規制も参照することも少なくなったのですが、昔読んで分かり易かった本をご紹介します。
『バーゼルIIIは日本の金融機関をどう変えるかーグローバル金融制度改革の本質」(藤田 勉(著)、野崎 浩成(著)
(ただし、もう相当昔のデータで、まだ日本の銀行の資本が足りないという記述がある等、ここ数年で劇的に変わった状況は反映されていません。)
「4. の通貨スワップ市場の動向」
については、国境をまたいで銀行業を行う場合、当然各国で通貨が違う(預金と貸出の通貨が違うことになる)わけですが、途上国の中小企業のように円で預金もってドルで貸出を行い、円高になるだけで倒産するなんてことはまさかできないので、為替スワップ、通貨スワップ取引というものを行い、為替リスクをヘッジすることになります。
これに関しては『企業ALMの理論と実務ー金利・為替リスクのヘッジとデリバティブの活用」(佐藤 司(著))が理論的な話に走りすぎず、実務のイメージがわく良書でした。
これらの本は例えるならば英語を勉強する際にアルファベットを覚える程度の基礎的な内容です。
実際には金融工学の勉強を約10000時間、金融市場という怪物にどう対峙するかというスポーツ的感覚を得るのに約10000時間、銀行ビジネスの要点を把握するのに約10000時間(日本国外では必要知識がどんどん変わるので、こういうのをちゃんと全部読んで理解する必要があります)かかり、合計で10年程度は習得に時間がかかるのを覚悟した方がよいとは思います。
それでも一旦これらを会得してしまえば世界190カ国の信用市場にアクセスするチケットを手に入れられることになるので、興味ある人はぜひチャレンジしてみてください!