ブログ

なぜ途上国、新興国市場における中小企業の利益率は高いのか - 収穫逓減の法則 –

当社ブログでは以前にも、途上国や新興国市場における中小企業への融資に際しての高金利は、借り手(中小企業)の高い利益率によって正当化される、との情報発信を行ってきました。

しかし、それでもやはり高金利に対する違和感はぬぐい去れないかもしれません。今日は経済学的な視点からこの問題について考えてみます。

確かに高いマイクロファイナンス機関の金利?

確かに欧米諸国や日本の基準から考えると途上国や新興国市場における金利、特にマイクロファイナンス機関の金利は高いです。

マイクロファイナンス機関の金利幅

(出所:Microcredit interest rates and their determinants)

上の図を見ると、多くのマイクロファイナンス機関の金利は20〜40%、高い所では70%以上の金利を課している機関もあるようです。欧米人や日本人が一見すると、途方もなく高い金利に見えてしまうのも無理はありません。

大事なのは「お客様視点」

しかし、金利が高いこと=悪、なのでしょうか?言うまでもありませんが、融資の本質は、借りたお金を使ってお客様が利益を出し、その一部を金利として返す、ということです。なので、お客様が高い利益を出せる環境にあるなら、ある程度の高金利も正当化される、ということは当社ブログでも度々申し上げてきた通りです。

お客様のニーズに合致していれば高金利は正当化される、ということです。逆に言えば、金利が高くてもお客様がそれを必要としているならば、そこにサービスを提供する余地がある、という事です。

例えば、卑近な例で恐縮ですが、今とても喉が渇いていて缶ジュースが飲みたかったとしましょう。しかし、手元に100円玉がなくて困っている。その時、たまたま隣にいた友達に「100円貸してくれないかな?明日101円返すからさ」とお願いしたとします。これは、単利計算で、年率365%の超高金利になります。しかし、多くの人はこの友達の事を「高利貸し」と言って批判したりはしないのではないでしょうか?

さて、では途上国や新興国市場では借り手が高い利益を出せる環境があるのでしょうか?借り手は多少金利が高くても融資を必要としているのでしょうか?

収穫逓減の法則

大学時代に経済学部だった方は、「収穫逓減の法則」という法則を覚えていらっしゃるかもしれません。「収穫逓減の法則」とは、「ある財の生産を増やそうとして生産要素を投入した場合、要素の追加投入量1単位当たりの収穫量の増加がしだいに少なくなること」です。

(出所:The Economics of Microfinance)

簡単に言うと、「小さな会社が10万円借りて事業を行う時の方が、大きな会社が同じ10万円借りて事業を行うときより高いリターンを出せるよ」ということです。

これがマイクロファイナンスのミソです。欧米諸国や日本において中小企業に融資する場合、その金額は少なくとも100万円超でしょう。しかし、マイクロファイナンス機関の一件の貸し出し金額は4万円、5万円の場合も少なくありません。上に説明した収穫逓減の法則によれば、小さい事業の方が高い利益率を出せる事になるので、途上国、新興国市場における中小事業者は少々高い金利でお金を借りても十分に儲けを出す事ができます。

利率ではなく、そこで本当に何が起きているかに目を向けよう

著者は中南米のマイクロファイナンス機関に勤務していたことがありますが、実際、多くの方は、上に述べた様な「明日101円返すから今日100円貸してよ」的なファイナンスを必要としています。

借り入れ期間は短期で、利益率の非常に高いビジネスを展開しているのです。(以前当社のブログで紹介した、焼き鳥の露天を出す為の網やドラム缶購入の為の融資の話と同じです。)年利に換算した利率にはあまり意味がなく、借り手が本当にベネフィットしているかどうかが問題なのです。彼等が融資を必要とする限り、そのサービスを提供してゆくのが当社の役割と考えます。

(参考文献)
Microcredit interest rates and their determinants:
http://www.cgap.org/sites/default/files/Forum-Microcredit%20Interest%20Rates%20and%20Their%20Determinants-June-2013.pdf

The Economics of Microfinance:
http://www.fgda.org/dati/ContentManager/files/Documenti_microfinanza/Economics-of-Microfinance.pdf

Infobank マネー百科 金融用語辞典と投資信託情報
http://money.infobank.co.jp/contents/S200499.htm


最近のブログ