バーナンキショック以降にペルー経済に起こったこと
クラウドクレジットの杉山です。
前回はペルーの為替に関する近況をご紹介しましたが、今回はバーナンキショック以降のペルー経済の状況の推移をご紹介します。
2014年の景気後退
外為市場では2013年のバーナンキショックで潮目が変わったといわれますが、ペルーの実体経済自体は、他の多くの新興国と同様に翌2014年に中国経済の成長率がそれまでより本格的に鈍化し始めたことによって資源価格が下落を続け、資源国として広範な分野で経済成長が減速したことが潮目の変化でした。
ペルーの経済成長率は2013年の5.8%から、2014年は2.4%にまで急激に鈍化しました。
(ペルーの実質GDP成長率、出所:ペルー中央準備銀行)
経済成長率の低下の内訳をみると、ペルー経済を支える鉱業に加えて漁業、第2次産業、サービス産業、不動産とどの業種も軒並み成長率が鈍化していることがみてとれます。
このうちサービス産業と建設業はあくまで成長率の鈍化でマイナス成長ではありませんが、鉱業、漁業、第2次産業はマイナス成長でした。
(2013年から2014年にかけてのペルー経済の成長率鈍化の内訳、ペルー中央準備銀行)
この状況に対して、ペルー政府は減税によって景気の回復を図ります。
具体的には企業の収入税がそれまでの30%から2015年、16年は28%に、17年、18年は27%に、19年以降は26%と段階的に引き下げられることになりました。
ちなみにこの施策によって当社のペルー子会社が延滞債権投資事業において支払う収入税も段階的に下がってきており、ほんの少しではありますが、その分パフォーマンスは向上しています。
2015年の景気回復
2015年といえばまだ世界の新興国を取り巻く状況は芳しくない頃でしたが、上記の減税によって2015年には早くもペルー経済は回復基調に入りました。
経済成長率は前年の2.4%から3.3%に上昇し、その内訳は前年マイナス成長になっていたものの減税の恩恵が大きかった鉱業、漁業、第2次産業が牽引したものでした。
一方で前年の景気の後退から一歩遅れて建設業が一時的に不調になり、この年は経済成長の足を引っ張る側になってしまいました。
建設業セクターがマイナス成長に陥るのは、ペルーではかなり久しぶりのことでした。
(2014年から2015年にかけてのペルー経済の成長率改善の内訳、ペルー中央準備銀行)
(ペルーの建設業セクターの成長率の推移、出所:ペルー中央準備銀行)
2016年、17年も減税の効果によってペルーの経済成長率は改善し続けるとみられており、今年は各セクターの成長率が緩やかに改善する中でも、建設業の一歩遅れての復調が目立っています。
(2015年から2016年にかけてのペルー経済の成長率改善の内訳、ペルー中央準備銀行)
建設業セクター自体の成長率は2015年に一度マイナスに陥りましたが、リーマンショック前後も堅調だったペルーの不動産市況は堅実さを現在でも保っています。
(ペルーの不動産市況、出所:ペルー中央準備銀行)
経済の見通しが明るさを増したことに加えて今年の2月に現地通貨安のトレンドも終わりを迎えたことにより、今年に入ってからのリマ証券取引所の株価指数は年初来37%上昇しています。
(リマ証券取引所の株価指数の推移、出所:ペルー中央準備銀行)
新興国経済も千差万別
日本では投資信託等の投資先となっていて馴染みが深くなっているブラジル、トルコや南アフリカの経済がここ数年不調続きだったことから世界の新興国が不況に陥っていると思われがちですが、あくまでブラジル、トルコ、南アフリカの経済が不調だったのであり、ペルー経済のここ数年の歩みをみると、そうでない新興国も少なくないことがみてとれます。