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資産運用とアフリカ中小企業金融をつなぐ裏方 – クラウドクレジット商品部のカメルーン出張記(2) –

前回までのあらすじ、日本から飛行機を乗り継いで来た著者は、Ovamba(オバンバ)に無事到着したのでした(ざっくり)。

Ovamba社オフィスにて

左から、Viola(バイオラ)COO、Marvin(マービン)CEO、著者

 

経営陣の二人

Marvin Cole(マービン)創業者兼グローバルCEO

  • 米国籍。32歳。
  • 新興国に特化した投資コンサル会社の共同創業、米系コンサルティングファーム、マッキンゼーを経て当社創業。
  • 好きなスポーツ : F1

          健康のため、Bloombergの経済ニュースを見ながらエクササイズするそうです。

  • 好きな日本映画 : 二郎は鮨の夢を見る
  • 好きな日本の歌手 : 日本でのAKB48の活躍が不思議・・・と困惑気味。

 

エピソード

  • Ovambaの業務品質を改善するため、サービスマニュアルを作り上げスタッフへの定着を図る。
  • 10歳児でも業務ができるほどわかりやすくマニュアルを作成したが、それでも複雑だと社員から不満が出たので、実際に子供にやらせたら・・・できた(・∀・)!

 

Viola Llewellyn(バイオラ)共同創業者兼グローバルCOO

  • 英国籍。(年齢:聞いて驚きました!)
  • ファンドマネージャー出身。米国において15年以上の技術系、及び政府系セクターでのプロジェクトマネジメントの経験を持つ。
  • 家族のルーツがカメルーンにあり、自身も12歳から4年間を当地で過ごす。
  • 好きなスポーツ : ラグビー、陸上競技

          健康のため、自宅の地下のフィットネスルームで毎朝、映画を見ながらルームランナーで走っているそうです。

  • 好きな日本映画 : おくりびと
  • 好きな日本人歌手 : Puffy(パフィー・アミユミ)

 

エピソード

  • 幼少期にスポーツを習っていたが途中でやめさせられ、代わりに教養のためにチェストチェロを習わされたとのこと。

 

創業の背景

  • かねてからMarvinとViolaは知己でしたが、Marvinがマッキンゼー在職時の調査で2010年以降カメルーンの経済環境が改善した旨をViolaと共有し、Violaが実際にカメルーンに来てみて環境の変化を確認。
  • 一方で同国の銀行は非常に非効率で、たとえば
    • 銀行の預金金利は2%であるが、集めた預金を政府系機関に8%で融資しており、中小企業向け融資のモチベーションがわかない。
    • 資金需要があるひとが銀行で融資を申し込むと、融資条件として借りたい金額と同額の預金を要求された。

などなど、エピソードがたくさんあり。

  • こうした借り手と貸し手のギャップをビジネスチャンスとしてとらえ、二人で共同創業に至ったとのことです。

 

著者所感

  • 後述の業務風景をみて、Marvin、Violaとも社員に対しては威厳をもって接しているとの印象をもちました。
  • 上記の所感を直接Marvinに話したところ、意識的にそう振る舞っている部分もあるとのこと。というのもカメルーンの企業文化は、社内の職位を重んじる縦社会なので、そうした方が会社がうまく回るそうです。

 

オフィス所在地について

オフィスからはドウァラ港のそばのコンテナ集積場が見えます。

コンテナ集積場とOvambaのビジネス

『コンテナ集積場』とは、港湾には集積しきれないコンテナを一時的に保管しておく場所で、コンテナの積み上がり方で小売・流通業の市場動向を文字通りリアルタイムにモニターすることができます。

具体的にはコンテナ企業ごとに、取扱い地域(輸入相手国)と品物が異なり、もちろんコンテナの色とデザインは異なるので、その集積度合いは小売・流通市場の最新動向を反映するナマの指標となっています。

例えば、学生服など通学用の服には季節性があり、新学期の始まる9月に大量に輸入されるため季節性を反映しますが、その輸入元が中国なのかイタリアなのかで消費者の嗜好も反映しうるとの意味です。

こうした手法は米国小売り大手ウォルマートも取り入れているとのこと。

またコンテナ集積場から近いことで、当社の顧客となる輸入業者の拠点もオフィスから近くなり、営業の効率も上がります。

 

顧客との打ち合わせスペースでしょうか。

キッチンもあります。

 

トレードファイナンスについて

杉山のブログでも説明差し上げていますが、Ovambaは国内の輸入業者に対して『トレードファイナンス』という金融サービスを提供しています。

輸入業者は、海外から商品在庫を購入する際に、買戻し(売戻し)条件つきで商品の所有権をOvambaに譲渡する代わりに、資金を調達します。

例えば、A社がタイヤを輸入販売する場合でみてみましょう。

  1. A社は、Ovamba社から資金調達し、タイヤの在庫を購入します。
  2. このとき、タイヤの所有権はいったんOvambaに帰属します。

  3. A社は、市場でタイヤを販売します。

  4. A社は、契約満期時に、当初設定した所有権の買戻し価格をOvambaに支払います。

なぜこのような仕組みをOvambaが採用しているかというと、ひとつは商品自体を所有するトレードファイナンスの安全性と、もう一つは、カメルーンで人口の20-30%を占めるイスラム教において、お金に利息が付くことが認められていないためです。
そのためイスラム教の教義であるシャリア法に準拠して、モノ(上記の場合はタイヤ)の売買という形での取引を行います。いわゆるイスラム金融も同じ文脈での取引手法です。

では、Ovambaはそうしたトレードファイナンスの与信先をどのようにスクリーニングしているのかというと、大きく2つの基準があります。

1つ目は、上記在庫の担保価値

2つ目は、与信先の信用度

です。

 

Ovambaの信用分析

欧米で一般的に、過去の金融取引データにもとづくFICOスコアに応じて住宅ローンなど融資条件が適用されますが、Ovambaでは与信候補先の50項目の財務的指標に加えて、アンケート調査結果から抽出した思考・行動特性など、心理測定的な指標もふまえて信用度を算出しています。

たとえば、フェイスブックのデータや、出身部族も独自の分析要素として考慮され、スコアリングに反映されています。

蛇足ですが、OvambaのBI(ビジネスインテリジェンス)チームには、米国の有名大学とLSE(ロンドン スクール オブ エコノミー)の両方の修士号をもつスタッフもいるなど、想像以上に(本当に失礼!)インテリ集団です。

 

業務風景

『Run Off(ランオフ)』というロールプレイ教育を週3回、各1時間以上かけて英語とフランス語で行っています。

申込からクロージングまでの一連のながれを、資金需要者(トレードファイナンスの受け手)役を社員から指名し、営業、審査担当、審査マネージャー、リーガルドキュメント、経営の各部門から代表者が、教育を受ける社員への説明を交えて、模擬的に実演します。

これは、社内で業務ノウハウを共有し、スタッフのサービス水準を高めるトレーニングの一環です。

著者の理解ですが、こうした地道なトレーニングは、そもそも金融機関出身者が少ないこの国では、スタッフの専門性を高めるために相応に有効に思えました。

Run-offの様子

壁のグラフは、各種の経営指標(KPI)。

実際のロールプレイ教育の様子(写真をクリックいただくと動画が再生されます。)

わずか17秒の動画です。わかりにくくてすみません!

 

Ovambaでは、業務への責任感を強め、目標達成へのコミットメント意識を向上させるためにペナルティも課せられます。

各自の期日と時間厳守を守れないと、ペナルティである『みんなの前でダンスの罰』(今名前を適当に決めました)です。

普段は怖いCEOのMarvinも、ペナルティでは率先して(笑顔で)踊ります。

日本の会社では、悲壮感漂いかねないミーティングでも、厳しさとユーモアを両立する手法に感心しました。

ヽ(^。^)ノ踊るCEO(写真をクリックいただくと動画が再生されます。) 

 

顧客紹介キャンペーン『Ovambaプレミアリーグ』

既存のトレードファイナンスの顧客が新規顧客を3名紹介し、かつその紹介先がトレードファインンスの受け手として承認された場合、紹介者は、平均より長いトレードファイナンス期間、ファイナンス枠の増額、手数料の減額という特典があたえられます。

どこの会社も顧客開拓に知恵を絞ることは同じですね。

屋外広告

潜在顧客の認知度向上のため、ドゥアラ中心部に屋外広告を出しています。

 

以上、カメルーン到着早々、とても濃密な打ち合わせをさせていただきました。

打ち合わせのあとは地元の川沿いのレストランにお招きいただき、晩ごはんを堪能しました!

奥に見えるのは(名前は忘れましたが)パスタと餃子の皮の中間の食感の食べ物、中央に大きな焼きエビ、そして手前は揚げたバナナ。 

テーブルを囲んで一枚

ワインもいただき、ご満悦の表情の著者!

 

同じく、夕食を食べた河畔のレストランでの一枚。

カメルーンの人たちはパーティーが大好きで、楽しみ方もいろいろです。

この日は金曜日だったこともあり私たちのまわりのテーブルでは、『白い服を着て集まる』という趣旨のパーティーが隣で開かれていました。

こうした楽しいイベントが、週末ごとに各所で開かれるのがカメルーン!

 

一日飛んで二日目の朝のミーティングでのひとコマ。

現地の揚げパンをいただきました!

カメラを向けると自然にこのポーズ。さすがです!

次回は、カメルーン訪問二日目、Ovamba社のトレードファイナンスの利用者訪問編です!


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