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EU起業のしやすさ

ヨーロッパ 起業のしやすさ研究

 

EU加盟国の中には、世界の中でも比較的高い成長率や一人当たりGDPを誇る国々もありますが、近年中には経済成長の鈍化、高い失業率に悩まされている国も増えています。各国政府は色々な方策を講じていますが、中小企業の起業やスタートアップを育成することも重要な柱のひとつとされています。

 

サブプライムローン事件以来、投資意欲が縮小し、中小企業への資金流入が滞っているのはEUに限った事ではありませんが、経済の低迷が顕著な一部のヨーロッパ国にとっては、資金供給者の減少は深刻な悩みです。スペインやイタリアは新規事業の立ち上げ数が減り、ユーロ市民の79%が金融へのアクセスの難しさが、事業の設立・拡大の足枷となっていると回答しています。

 

ユーロ圏の近年のベンチャーファンド新設のデータを見てみましょう。2007年には、総額82億ユーロの事業への投資が確認されましたが、2009年には激しく落ち込み、2013年の現在も、対2007年比の約半分と、リーマンショック前までの回復は遥か及びません。更に、現在の多くのファンドは、公的機関によるもので(2007年:14%→2013年38%)、民間による投資に勢いがありません。

ユーロ28ヵ国 資金源別 新規開設ベンチャーファンド(単位:€ 10億)

 

特に、北欧、中央及び東欧にこの傾向が強く出ています。DACH地域(ドイツ・オーストリア・スイス)の公的機関ファンドが全体に占める割合は17% であるのに対し、北欧は35%、中央及び東欧に至っては43%と、約半分です。

ユーロ28ヵ国 地域及び資金源別 新規開設ベンチャーファンド(単位:€ 10億)

 

このトレンドによる問題点として、ヨーロッパ諸国の公的機関のファンドは上限が設定されているケースが多いため、公的ファンドだけでは、企業数・事業規模ともに、開始・拡大するための十分な資金が確保できるとは限らないという点があげられます。このために、多くの国々は、公的機関ファンドの新規ファンドに占める割合が上昇傾向にあることに対して、警鐘を鳴らしています。

 

このような状況の中で、ヨーロッパ地域の起業家は、50万ユーロ程度までの資家層は比較的充実してきていますが、50万ユーロ~500万ユーロの金額を供給する投資家層が少ない、いわゆるベンチャーファイナンスにおける「死の谷」問題がヨーロッパのファイナンス環境における課題として挙げられます。

 

またレイター・ステージのベンチャー企業への投資が米国と比べて不足していることも、今後の課題と言われています。

 

米国と欧州のベンチャー企業への投資案件数(単位:1,000

 

特にレイター・ステージのベンチャー企業は、借入などの融資(デット・ファイナンス)が資金調達手法の選択肢に含まれてきます。このために、比較的キャッシュフローの高さが見込める業種の企業に対しては、将来的にはハイリスク・ハイリターンの融資先として、融資型のクラウドファンディングが増えてくるかもしれません。

 

ベンチャー企業の発展サイクルとアクセス可能な資金

 

 

出所:World Economic Forum ”Enhancing Europe’s Competitiveness Fostering Innovation-driven Entrepreneurship in Europe” 2014, European Private Equity and Venture Capital Association (EVCA)

 

 


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