これまでもソーシャルレンディング事業者の見分け方についてお客様からよくご質問を頂きましたが、最近ご質問を頂くことがより多くなったためブログにまとめました。
以下、第1部で一般的な運用業者の評価基準を、第2部でクラウドクレジットが重要視していることを、そして第3部で基本的な管理体制を構築できていない可能性が高い事業者の簡単な見分け方をご紹介しています。
多少冗長になってしまったため、ご興味のある部分のみ読んでいただけますと幸いです。
1.一般的な運用業者の評価基準 – 5つのP
ソーシャルレンディング事業者は、ローンに投資を行うアクティブ運用の会社です。
一般的にはアクティブ投資ファンドというと株式や債券に投資を行うことが多いと思うのですが、そういったファンドを評価するに際して、経験則的に「5つのP」をみよう、とよくいわれます。
5つのPとは、
●フィロソフィー(Philosophy)= 投資哲学
●ピープル(People)= 人材
●プロセス(Process)= 投資プロセス
●ポートフォリオ(Portfolio)= ポートフォリオの構成
●パフォーマンス(Performance)= 運用効果
のことです。
以下、それぞれご説明します。
《投資哲学》
上記の企業年金連合会のウェブサイトでは「運用機関としての運用哲学、組織理念が明確で、かつ一貫しているかどうかということ。そして、これが人材や、運用プロセスにどのように反映されているかをチェックすることが重要である。」と説明されています。
クラウドクレジットの運用哲学、組織理念は「世界で遍在している市中の事業機会と投資資金とを繋ぐサービスを提供することによって、お金の受け手と出し手の両方がより豊かになることを目指す」運用を行うことです。
《人材》
企業年金連合会のウェブサイトでは「質的、量的に十分な人員を配置しているかどうかということである。専門知識や経験豊かな者が必要な数だけいることが重要だが、ファンド・マネジャー、運用責任者の交代頻度が高くないかといったことにも留意する必要がある。」と説明されています。
クラウドクレジットにはグローバル金融を行うためのファンドの組成、運用、管理、また業務、法務コンプライアンス、金融システム、ガバナンスのプロフェッショナルが集っています。
また、グローバル金融をソーシャルレンディングというサービスに落とし込んで実際にお客様にご提供するためのUXデザイン、顧客サービス、プロジェクト・マネージャー、広報マーケティング、そしてこれら全てを支える人事、財務のプロフェッショナルも集っています。
運用責任者の交代頻度については、日々(刻々)の相場変動が激しく、ハンドリングするファンド・マネージャーの力量によってかなりパフォーマンスが変わってくる、株式に投資を行うファンドと比較するとソーシャルレンディングの場合は、その重要性は若干低いのかなと感じています(当社では運用責任者を、現在は社長でもある私が務めています)。
《投資プロセス》
企業年金連合会のウェブサイトでは「資産運用の意思決定をどのように行っているかということ。運用方針を決定する組織や基準が明確で効率的か、リスク管理は適正に行われているか等が重要である。」と説明されています。
クラウドクレジットでは商品部のメンバーが組成を行ったファンドについて、投資委員会の委員全員が賛成した場合にお客様へのファンドのご提供が決定されます。
リスク管理についてはまさにクラウドクレジットが特に重視している点ですので、後ほど詳しくご説明をさせて頂きます。
《ポートフォリオの構成》
企業年金連合会のウェブサイトでは「パフォーマンスの源泉である資産の種類や銘柄構成等がどのようになっているか分析すること。」と説明されています。
クラウドクレジットでは東欧、アフリカ、ラテンアメリカの個人向けローン、中小事業者向けローン、ノンバンク向け融資、マイクロファイナンス向け融資、不動産担保ローンに加えて延滞債権での運用を行っており、再生可能エネルギー事業者向け融資での運用も始めようとしているところです。
今後、各種統計情報の開示もより一層の充実を図って参ります。
《運用効果》
企業年金連合会のウェブサイトでは「運用結果の検証。運用結果を、市場ベンチマーク対比の運用利回りや、類似ファンドの複数のデータを集めたユニバースと対比して評価される。」と説明されています。
クラウドクレジットでは、出資実行者全員の方の推定リターンの分布図(当該リターンを推定するための将来キャッシュフローはあくまで当社運用部が運用先の資産の質等から推定したものである点をご留意ください)を月次で公表させていただいています。
今後、比較対象となるようなアセットクラスとの比較もお客様に容易に行って頂けるような機能も付加して参ります。
2.クラウドクレジットが重要視していること
クラウドクレジットではファンドをお客様にご提供するにあたって、リスクマネジメント、アカウンタビリティの2つを特に重要視しています。
ソーシャルレンディングはとてもリスクの高い投資です。
例えば株式投資について過去の50年、100年という超長期でみたときの平均年率リターンはだいたい5~8%くらいといわれているそうで、日経平均株価もリーマンショック前後では1年弱で半値になってしまったり、一昨年2016年も何か特別な経済/金融ショックがあったわけでもないのに年始から一時20%以上も価格を下げてしまったりしたなど、投資家の方は非常に渋い思いをしながらリターンを得ています。
期待リターン5~8%というのは、多くのソーシャルレンディング事業者で目標とされているリターンの水準とちょうど同じくらいです。
株式投資家は日常的に渋い思いをしながら(超長期で)5~8%のリターンを得ているのに、ソーシャルレンディングだけ一本調子で5~8%のリターンを得られると考えるのは楽天的すぎます。
クラウドクレジットでは、投資家の方にソーシャルレンディングで投資を行うローンは日常的に遅延、デフォルトを起こし、元本割れをしてしまうファンドもでてくることを前提として投資をしていただきたい旨を繰り返しご説明してきました。
このブログを書いている2018年7月現在、これまでクラウドクレジットがお客様にご提供をしてきたファンドのうち4%程度が遅延を起こしており、そのうちの半分(全体の2%程度)は回収額が元本に達しないとの見通しを投資家に方にお伝えさせていただいています。
その中で、クラウドクレジットが特に重視をしているリスクマネジメント、アカウンタビリティについてそれぞれご説明をさせて頂きます。
《リスクマネジメント》
投資したローンが遅延、デフォルトが起きることを所与とすると、当然それを管理する体制が必要になります。
クラウドクレジットでは、投資したローンが遅延、デフォルトをした際のプロセスが社内で確立されています。
例えば、あるファンド・シリーズが遅延をしてしまった場合、そのファンド・シリーズが合同運用を行っている場合は、ファンド各号の投資家の方の平等を考慮する必要があります。
当社ではこの投資家の方の平等を「ファンド各号の投資倍率が等しくなること」と定義し、遅延しているローンの将来キャッシュフローを推定してその仮定のもとで各月ごとにファンド各号にどのように回収したお金を按分するか、再帰計算を行うことによって求めて速やかに投資家の方に分配を行っています。
こういうプロセスが存在しないと、実際に遅延、デフォルトが起きた際に業者は何も対応をできなくなってしまいます。
また当社はお客様にはソーシャルレンディングでの投資でローンが遅延、デフォルトするのは日常茶飯事と考えて投資を頂くことをお願いしてはいますが、もちろん当社グループとしてお客様のお金をお預かりするローンの運用会社である中で、遅延、デフォルトが起こってよいと思っているわけではありません。
先日プレスリリースをださせていただいた通り、当社ではこれまでも行ってきた
●遅延、デフォルトが起きた際の回収率を最大化できる確率をあげるためのストラクチャ強化
●既存融資先のモニタリング
●遅延、デフォルトにつながりうる事象の早期発見とそれを治癒して遅延、デフォルトを回避しうる施策の融資先との折衝
●遅延、デフォルトが起きた際の回収額の最大化
等の業務を専門で行う部署を新設し、これらの業務をさらにひとつ高い水準で行っていくことを目指しています。
《アカウンタビリティ》
ローンへの投資は、株式への投資よりも透明性が低いと言われます。
情報が不確かだと投資家の方は闇鍋にお金を投じてギャンブルをするだけになってしまいます。
そこでクラウドクレジットではホームページ上にファンドの運用状況・実績を公開するページを作り、
●運用中の全ファンドの資産の質を開示する期待リターンマップ
●全出資実行者の方の推定リターンの分布図
●償還したファンドのパフォーマンス・レポート
●遅延しているファンドの状況をご報告するレポート
をどなたにでも見て頂けるようにしています。
またクラウドクレジットでは定期的にセミナーを開催し、投資家の方に直接私や当社のファンド運用担当者に質問をしていただける機会を設けることを心がけています。
3.基本的な管理体制を構築できていない可能性が高い事業者の簡単な見分け方
以前からセミナー等でお客様からよく「投資としての勝ち負け以前の部分で足元をすくわれないために、業者を見分けるいい方法はないのか?」というご質問を頂いてまいりましたが、なかなかそんなに簡単な方法はみつからないな、、と感じていました。
しかし、最近とても簡単な見分け方をひとつ気づきました。
それはとてもシンプルで、業者が以下の写真をお客様にだせるかどうかです。
これは、当社が銀行で保有している、当社がお客様にご提供しているファンドの資金を分別管理する口座の通帳の束です。
フィンテック、デジタル・ファイナンスなどの言葉が流行る昨今ですが、現在の日本の金融インフラの中でソーシャルレンディングの事業を行うには、ファンドを組成するごとに銀行にファンドの資金を分別管理するための口座をひとつひとつ開設する必要があります。
日本でソーシャルレンディング・サービスを運営している事業者は一般的に数十から数百くらいのファンドを運用中だと思いますので、口座の通帳も数十から数百持つことになります。
ファンドの資金の分別管理というのはソーシャルレンディング・サービスの運営を行うにあたっての管理体制の「基本のき」ですので、それができていないということは他の管理体制も法令が求める水準に達していない可能性が高いです。
ソーシャルレンディングはマイナス金利時代の新しい運用対象
日本ではゼロ金利、マイナス金利の時代がもう20年近くも続き、従来の株式プラス債券という定石のアセット・アロケーションで運用を行うことが教科書に書いてあるほどは楽でなくなってきました。
その中でローンという実物資産に投資を行うオルタナティブ投資であるソーシャルレンディングは、日本の個人投資家の方にとっても新たな投資機会となっています。
ぜひ当ブログでご紹介をさせて頂いたポイントも考慮して、クラウドクレジットのファンドでの運用をご検討いただければと思っております。