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マイクロファイナンスの問題点とその対策   ~投資家側の責任について~

当社は2018年1月のペルー金融事業者支援ファンド発売開始を皮切りに、積極的にマイクロファイナンス機関への融資を実行しており、先日もペルーの協同組合型マイクロファイナンス機関への融資を開始致しました。

今後も積極的にマイクロファイナンスファンドを発売してゆく予定です。

マイクロファイナンスというと、2006年にムハマド・ユヌス氏がグラミン銀行と共にノーベル平和賞を受賞してから、貧困削減手法として大々的に注目され、各国の公的機関や国際機関が多くの資金や労力を割いて取り組んできました。

しかし、マイクロファイナンス(低所得者層への少額融資)さえ行えば魔法の杖の様に貧困問題は解決されるのでしょうか? ことはそんなに単純ではなさそうです。
貧困とは、経済・社会問題が複雑に絡み合って引き起こされる多面的な問題であり、一つの打ち手だけで解決されるような単純な問題ではありません。

この記事では、マイクロファイナンスでは解決できないかもしれない問題、もしかしたらマイクロファイナンスによって引き起こされてしまうかもしれない問題、それを事前に防ぐために留意しておくべきいくつかのポイントについて考えてみたいと思います。マイクロファイナンス機関に融資を行う側として、これらの点を認識しておくことは重要だと考えます。

① 多重債務問題にどう対処するか?

マイクロファイナンス機関は金融機関ですので、貸付を行わなければ売り上げと収益が伸びません。マイクロファイナンス機関の貸付担当者は通常、「月に新しい顧客を○○人獲得する」「貸付額を○○額増やす」等のノルマを抱えています。それらのノルマを達成するとボーナスが上がったりします。ですので、必然的に、「沢山貸したい」というインセンティブが働きます。
しかし、当たり前ですが、お客さんが必要とする以上のお金を貸すことは望ましくありません。ましてや、金融リテラシーの高くない貧困層に「お金を借りてビジネスを始めれば必ず生活が楽になるよ」などと、楽観的すぎる「夢」を抱かせて貸付を行い、お客さんを返済不能な状況に陥れてしまうことも大きな問題です。とあるマイクロファイナンス機関に返済をする為に他のマイクロファイナンス機関から借り入れを行い、さらにそれを返済する為にまた別のマイクロファイナンス機関から借り入れを行う、という「多重債務問題」にも発展します。
この様な状況を避けるためには2つの対策が必要です。

1. 顧客の返済能力をきちんと審査する。
マイクロファイナンス機関は、顧客の返済能力をきちんと審査し、返済能力がある顧客だけに貸付を行う必要があります。また、ぎりぎり返済能力はあるが、返済を行うと家計や教育費まで切り崩すことになってしまう、というような状況の人には貸付を行うべきではないでしょう。
2. 顧客に対して金融教育を行う。
金融リテラシーの低い顧客に対しては金融教育を行う必要があります。簡単な家計簿の付け方等からでも構いません。マイクロファイナンス機関側に金融教育を行う資金的、人的リソースがない場合には、国際機関やNGOが提供している支援プログラムを利用するのも良いでしょう。
資金を提供する側としては、上記の様な対策をきちんとマイクロファイナンス機関がとっているかを確認することが大事でしょう。

② 女性への貸付は女性をエンパワーするか?

ムハマド・ユヌス氏とグラミン銀行が注目された大きな理由の一つは、主に女性起業家への貸付を行い、彼女らの経済的自立を促して女性のエンパワーに成功したからだと言われています。確かに、女性だからという理由で銀行口座が開設できなかったり、送金サービスを利用できなかったり、という国は世界にはあり、女性がフォーマルな金融サービスを利用できるようにすることは大事なことです。
しかし、女性に対して少額の貸し出しをすれば問題はすべて解決されるのでしょうか?
例えば、女性のエンパワーメントを歌って女性にしか貸付を行わないマイクロファイナンス機関があったとします。そうすると、男性優位が残る社会においては、家庭で夫が女性を使ってお金を借りる、ということが起きたりします。自分はお金を借りられないから、妻にお金を借りさせて実質的には自分が使えばいいや、ということです。これでは女性がエンパワーされているとは言えません。
また、途上国、新興国の女性は仕事や家事でとても忙しく、そこに更に資金管理という仕事が加わって、重荷になってしまう、という指摘もあります。
ジェンダーの問題には文化や伝統的な価値観が深く影響を与えます。女性に貸付を行って彼女らに零細ビジネスを始めてもらったからといってすぐに男女不平等の問題が解決されるわけではないことは認識しておくべきでしょう。

③ グループ連帯保証制度と地域コミュニティについて

 

 

グラミン銀行が成功した大きな理由として、グループ連帯保証制度(5人組、等とも呼ばれる)があげられます。住民に5人程度のグループを作り、その中で連帯保証を組んでもらい、もし1人が債務不履行に陥れば、他の人がカバーする、というものです。これによって、無担保での貸し出しが可能になりましたが、その負の側面もあったと言われています。

この仕組みでは、返済能力のある人が他の人の損失をカバーすることになります。そうすると、返済能力がある人同士で5人組を組んだ方が良いことになります。また、もし個人で借り入れが可能な貸付サービスが他にあった場合、返済能力の高い人はそっちを選ぶ方が合理的になります。
そうすると、返済能力のある人は5人組から抜けてゆき、返済能力のない人ばかりが5人組を組むことになってしまいます。そうすると、コミュニティの中で返済能力のある人たちとない人たちの間に断裂が生まれてしまうかもしれません。

また、連帯保証制度では、万が一誰かが債務不履行に陥った場合、その人の債務を誰かがカバーしなければならないため、グループの中での不仲が生まれてしまいます。グループは通常、近所で組まれますので、近所づきあいがし辛くなり、最悪の場合、その場所に住めなくなってしまうかもしれません。

グループ連帯保証制度はコミュニティのつながりを壊してしまう可能性もある諸刃の剣なのです。

この様な背景もあって、現在ではグループ連帯保証制度を導入していないマイクロファイナンス機関も多数あります。グラミン銀行も現在はグループ連帯保証制度を行っていません。グループ連帯保証制度を使っている場合、コミュニティのつながりを壊さないようにどのような対応をとっているかはマイクロファイナンス機関側に確認することが望ましいかもしれません。

マイクロファイナンスは上記の様な問題点を抱えながら運営されていると言えるでしょう。もちろん、これらの問題点があるからマイクロファイナンスは良くない、と言っているのではありません。どんな事業にも問題点はあるものです。完璧な事業など存在しないでしょう。

ただ、問題点を認識しておくことで、それを事前に防ぐ手立てを考えることができると考えます。問題から目を背けるのではなく、きちんと認識して対策を考える方があるべき姿なのではないでしょうか。

 

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