ブロックチェーンを政府が導入する意味 ~ ジョージアの事例から
途上国、新興国から始まる「リバースイノベーション」を見逃すな

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先日、ジョージア政府がブロックチェーンを利用した分散型台帳管理システムを積極的に導入していくと発表し、話題になりました。これに対して、画期的であるという賞賛の声と、政府がブロック
チェーンを導入することに対する疑問の声、双方が聞かれます。

 

ジョージア政府はどのような理由からブロックチェーン導入に踏み切ったのでしょうか。また、なぜ一部の人々はこの動きに対して懐疑的なのでしょうか。ブロックチェーンの技術的な特徴や、ジョージアのような新興市場独特の国内状況から考えてみたいと思います。

 

政府はブロックチェーン技術を嫌う?

まず、このジョージア政府の決定に懐疑的な人々はどのような理由からこの動向を疑問視しているのかを考えてみます。これには少しブロックチェーンの技術的な特徴を把握する必要があります。

ブロックチェーン技術の最も重要な点は、正しい情報(完全な情報、改ざんされていない情報)が分散して管理されるという点です。

たとえば、ブロックチェーン技術によってつくられた仮想通貨、ビットコインの場合を考えてみます。我々が使う普通の通貨は、その価値を政府が担保しています。信頼のおける中央政府が「1万円札には1万円の価値があるよ」と保証してくれているから、1万円札(=ただの紙切れ)に価値があるのです。

中央で一元的に価値が管理されているので、これを「価値の一元管理」と呼ぶことにします。

 

一方、ビットコインの場合、その価値は政府によって保証されていません。不特定多数の人々がビットコインを保有していて、その価値は誰も保証していないのです。

ここで発生する問題は、だれかが不正をして自分の持っているコインの価値を書き換えてしまうことです。これはどういうことでしょう? ビットコインは、コインという名前はついているものの、実態は「台帳」です。

たとえば、今Aさんが10ビットコイン、Bさんが5ビットコインを持っているとします。AさんがBさんに3ビットコインを支払う、ということは、Aさんの台帳に-3が記録され、Bさんの台帳に+3が記録されて、結果、Aさんの台帳には残高7が、Bさんの台帳には残高8が記録される、ということです。

 

ここで問題となるのは、Aさんが本当は-3と記録しなければいけないのに、不正をして-1しか記録しないかもしれないということです。もしくは、Bさんが本当は+3と記録しなければいけないのに、不正をして+5と記録してしまうことです。このような不正が蔓延すると、当然ながら誰もビットコインを信用しなくなり、貨幣としての価値を失います。

ブロックチェーンの画期的な点は、この不正を、電子署名という方法を使って不可能にしたことです。そうすることによって、信頼できる中央政府が価値を担保しなくとも、ビットコインの価値は保たれます。

これが「価値の分散管理」ということです。

 

しかし、これは政府や、その他の中央集権的な機関にとって必ずしも望ましいことではありません。価値を一元管理することによってそれらの機関は自らの影響力を保ち、利益を上げることができるからです。

政府なら、通貨発行権を独占することによって流通貨幣量をコントロールし、経済に影響を及ぼすことができます。銀行なら、たとえば送金手数料等で利益をあげることができます。

一般化すると、「価値の一元管理」によって、管理主体が少なからず利益を得ることができる、ということです。一方で「価値の分散管理」を可能にするブロックチェーン技術によって、今まで価値を一元管理していた主体は、独占していた利益を得られなくなってしまう可能性があるということです。

これが、政府がブロックチェーンを導入することに懐疑的な人々の視点でしょう。

 

 

ブロックチェーンのメリット

しかし、本当にブロックチェーンによる価値の分散管理は政府にとってマイナスなのでしょうか? 必ずしもそう結論付けるのは時期尚早かもしれません。

上記の様に、ジョージア政府はブロックチェーン技術を推進していくということですが、特に土地の登記にブロックチェーンを利用する、とのことです。

土地の所有権はファイナンスにとって極めて重要なテーマです。きちんとした土地の所有権を有していれば、それを担保にお金を借りることができ、まとまった資本をその土地に投入して生産性を上げることができるからです。こうして農業生産性は上がり、経済は成長します。

しかし、途上国や新興国においては土地の所有権がはっきりしておらず(=政府による土地の所有権の管理がきちんと行われておらず)地元の有力者等によって恣意的に土地の所有権を奪われてしまうことがしばしばです。それゆえ、土地を持たない農民は小作農として働くしかなく、生産性が上がらなかったりします。

このように、中央政府のマネジメント能力が弱く、国民一人一人の土地の所有権をきちんと一元管理できていない場合に活躍するのが、「価値の分散管理」を可能にするブロックチェーンです。

ブロックチェーンを使って正確な情報(=土地の所有権)を分散管理することで、農民が土地を担保に融資を受け、生産性を上げることができるのです。そうすることで経済全体が活性化され、当然政府の税収も増えます。

(注)貨幣価値の分散管理も、土地の所有権の分散管理も、「価値の分散管理」という意味で本質的には同じです。

 

途上国、新興国から始まる「リバースイノベーション」

上記のような土地の所有権の問題は、日本のような国では起こりません。先進国においては幸か不幸か既存のシステムが整っているため、新しい技術を取り入れる必要性が低く、その普及が遅れる傾向にあります。

たとえば、全国津々浦々に銀行の支店やATMがある日本では、送金や融資をデジタルで行うメリットがあまりありません。一方で、全くと言っていいほど金融インフラが整っていないアフリカの国々においては、携帯電話をATMの代わりに使って送金や融資を行うデジタルファイナンスのビジネスが台頭してきています。

このように、従来のインフラが整っていないがゆえに、逆説的に途上国、新興国において先進国よりも高度なサービスが普及し、それが先進国に波及することを「リバースイノベーション」と言います。この「リバースイノベーション」によって、途上国、新興国が爆発的に経済成長を遂げる可能性があるのです。

きちんとした情報の一元管理ができていない途上国、新興国においては、ブロックチェーン技術が次なるリバースイノベーションの発端になる可能性は十分にあります。

 

途上国、新興国の経済成長を取り込もう

クラウドクレジットは、2016年8月にジョージアマイクロローン事業者ファンドを組成しました。投資先の国がこのように新しい技術を取り入れて、きちんとした情報管理を行っていくと発表したことは、非常に明るいニュースです。

上記に説明したように、ブロックチェーンを使った透明性の高い情報管理によって土地の所有権管理等のインフラが整備され、生産性が上がり、経済成長が期待されるからです。このような、これから「リバースイノベーション」が起こっていく途上国、新興国に投資することで、彼らの成長を後押しすると共に、高いリターンを得ることが予想されるのです。

 

 

参考文献:

Banerjee, A., & Iyer, L. (2005). History, institutions, and economic performance: the legacy of colonial land tenure systems in India. The American economic review, 95(4), 1190-1213.
Forbes Japan. 世界初の「ブロックチェーン導入政府」ジョージア 利用拡大を宣言
Govindarajan, V., & Trimble, C. (2013). Reverse innovation: Create far from home, win everywhere. Harvard Business Press.
Tapscott, D., & Tapscott, A. (2016). Blockchain revolution: How the technology behind bitcoin is changing money, business, and the worl
d.

 

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