イギリスでソーシャルレンディングがISAの対象に含まれた理由

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クラウドクレジットの杉山です。

 

クラウドクレジットのブログ「ついにイギリスでP2PレンディングがISAの対象に!」でもご紹介させて頂きました通り、先日イギリスの財務省が、来年の4月からソーシャルレンディング(Peer to Peer lending)をISAの対象とし(正式決定)、同時に、株式投資型などのその他の投資型クラウドファンディングも順次ISAの対象とする検討も行っていることを公表しました。

私はクラウドクレジットを創業する前の2012年までロイズ銀行というイギリスのメガバンクに勤務をしていたためここに至るまでの経緯を全て身近なものとして見ることができましたので、今回はこの経緯をご紹介させて頂ければと思います。

ことの発端は、2008年のリーマンショックに端を発するイギリスの金融危機まで遡ります。

リーマンショックやそれを引き起こした2007年夏からのいわゆるサブプライム危機自体はアメリカの信用市場の話であり、日本ではあまり知られていませんが、当時イギリスの信用市場が重大な局面を迎えているということは特にありませんでした。

しかし、金融危機を危惧しての預金の大量流出が起こり、Northern RockやBradford & Bingleyといった中堅の金融機関が破たんしかけて国有化されるということがありました。

大手金融機関もRoyal Bank of Scotlandや、破綻しかけたHBOSを救済合併したロイズ銀行に政府資本が注入されるなどしました。

イギリスの銀行が、貸しているお金に重大なことが起きているわけでもないのに預金者に経営状況が不安視され預金の大量流出が起り、それによって経営危機に陥ってしまったのは、「預金の量が貸付の量より圧倒的に少ない」からでした。

 

金融機関が貸付を行っている量に対して足りない預金の量を調達ギャップといいますが、この調達ギャップは、リーマンショック以前の世界では銀行間市場での取引や機関投資家からの投資、貸付を通じて柔軟に短期、長期の調達を行うことが可能でした。

それが2008年以降の世界では、この調達ギャップを埋める資金調達を行うことが容易でなくなってしまいました。

調達ギャップを埋められない=資金繰り倒産する、ということですので、その前に自身の預金を引き出したいということで、預金者の方が預金の引き出しに殺到したというものでした。

イギリスの銀行の経営危機自体はイギリス政府による資本の拠出と経済環境が徐々に良好になっていったことから重大な問題ではなくなっていきましたが、ポスト・リーマンショックの世界において調達ギャップを埋めることはイギリスの銀行にとって大きな問題であり続けました。

既存の調達ギャップを埋めるための資金調達ですら苦労をしている状況ですので、新たな貸付をどんどん拡大していくことなど、イギリスの銀行にとって思いもよりません。

日本でも90年代のバブル経済の崩壊後、98年の金融危機後に銀行等の金融機関による貸し渋りが社会問題化しましたが、リーマンショック後のイギリスのそれは、上記の理由から日本で起こった貸し渋り問題をはるかに超えるものでした。

当然イギリス政府は中小企業や個人を中心とした「社会」にお金が回らなくなっていくことに危機感を覚えます。

イギリス政府はリーマンショックの翌年2009年に、未曽有の金融危機を防ぐことができなかったということでそれまでの金融行政の体制を抜本的に見直し、マクロの観点からイギリスの金融システムに蓄積されているリスクを分析してそれに対処する方策を提言するFPC (Financial Policy Committee)を、政策金利の上げ下げ等の金融政策を決定するMPC (Monetary Policy Committee)と同格の最上位の会議体としてバンク・オブ・イングランドに設けます。

FPC自体は2013年4月にその活動を開始していますが、バンク・オブ・イングランドは2012年6月に、上記のような調達ギャップの存在が依然としてイギリスの金融機関の経営にとってリスクとなっており、そのために貸し渋りは構造的なものとして発生してしまっているとの分析を行い、そうであればポンドを大量に刷って銀行に(中小企業等に貸付を行うことを条件として)貸付をどんどんおこなって調達ギャップを埋めてしまえばよいという方策(Funding for Lendingと呼ばれます)を開始しました。

しかし、バンク・オブ・イングランドはその2年後の2014年春に、「Funding for Lendingは上手くいっていない」との声明を出します。

これは、世界中の銀行に適用されているバーゼルIIIのうち資本規制がリーマンショック後に年々厳しくなっていったためでした。

リーマンショック前に、預金という元本が保証されているタイプのお金を預かっている商業銀行が過度なリスクをとって経営危機に陥り、各国で国民の税金がその救済のために用いられることでかろうじて各行が生き延びた教訓から、同じ過ちが繰り返されないように、バーゼルIIIでは資本規制がかなり厳しめになっていたのですが、この規制が、正直私が銀行員として勤務していた2012年までに想像できなかったほど年々厳しさを増してきています。

資本規制が厳しくなるということは、たとえ中央銀行が大量のお金を貸してくれるのであっても、負うリスクの量を増やすわけにいかないので、貸付を増やすことができません。

こうして、Funding for Lendingは当初予定していた結果を出すことができませんでした。

しかし、ここからのイギリス政府の動きが早かったのです。バンク・オブ・イングランドは上記の声明の数か月後に、「社会にお金を回す仕組みとして、銀行以外に、ソーシャルレンディングという仕組みに注目している」という声明を出します。

そしてその数か月後の昨年秋に、今度はイギリスの財務省が「ソーシャルレンディングをISAの対象とすることで個人投資家のマネーを呼び込み、中小企業にお金が回るようにすることを検討する」という声明を出します。

当初はそこからまたほんの数か月で正式に決定される予定だったようなのですが、ここは大分遅れもあったようで(日本でもそうですが、イギリスでもソーシャルレンディングという仕組みが始まってまだ10年ほどですので、伝統的な投資信託等と比べた場合のストラクチャの頑健性や金融商品としてのリスクについて政府の方が納得するのに時間がかかったのではないかと個人的には思っています)、半年強の期間を経て、先日ようやく正式にソーシャルレンディングがISAに含まれることが決定されました。

もちろん銀行という仕組みがこれから無くなることはなく、預金という元本保証のお金を預かって住宅ローンや大企業向けの貸付などの安全な貸付を行うことは銀行が行い、個人向けや中小企業向けの貸付という金利も高いもののリスクも高いセクターについては、ソーシャルレンディング業者を通じて余裕資金を持った個人投資家の方や機関投資家の中でもリスクをとれるヘッジファンドといった主体に社会にお金を供給してもらう、という2本立てで社会にお金を回していくというイギリスの近未来の姿がみえてきます。

このようにイギリスではイギリス特有のお金の流れからソーシャルレンディングが育っていかなければ国内社会でうまくお金が回らなくなってしまうという強い危機感が育ち、世界でも唯一ソーシャルレンディングを国が全面的にバックアップするということになりました。

私は日本のお金の流れはイギリスとは全く異なるのでその真似を行うことは意味がなく、日本の場合、ソーシャルレンディングという仕組みは、日本の方の余裕資金を世界の魅力的な貸付先に投資いただくプラットフォームとして育てていくことで、日本のお金の流れを変えることができると考えています。

方向性は明確ですが、イギリスの場合もソーシャルレンディング業者さんが年月をかけて資産の新たな運用先として結果を出して顧客に支持をされたことによって政府も全面サポートを行うということに至ったわけですので、まずは目の前のオペレーションに集中し、ソーシャルレンディングという仕組みを通じて世界の信用市場に誰もが投資を行えるようにすることが日本全体のお金の流れを変えることに繋がり、人口が減っても日本がより豊かになる道筋を明確に見ていただくことを通じて、日本でもソーシャルレンディングがNISAの対象となることを目指していこうと思っています。

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