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ウクライナ情勢によるエネルギー供給への影響(2)

 

 

こんにちは、エコノミストチームです。前回に引き続き、ウクライナ情勢によるエネルギー供給への影響をお話いたします。

 

前回、EU内ではロシアからのエネルギー供給の停止に対する懸念が浮上したとお話いたしましたが、実際にエネルギーの禁輸は起こりうるのでしょうか。その前に、昨今のロシア産ガスへの依存の原因についてお話いたします。

 

BP Statistical Review of World Energyによると、欧州のガス輸入量は2013年に前年の3,772億㎥から3,971億㎥と約0.5%増のほぼ横ばいでした。しかし、ロシアからのガス輸入量は2012年の1,300億㎥から2013年には1,624億㎥と約25%増です。これらの背景には、ノルウェーのガス田のメインテナンスの関係で欧州向け輸出量を減らしたこと、そしてアルジェリアのガス産出量が低落傾向のため、全体的に輸出量が減ったことが要因です。

 

(出所: BP Statistical Review of World Energy, Crowdcredit)

 

 

では、ロシアによるエネルギーの禁輸は起こりうるのかを検証いたします。EU全体としてみると、ロシアへの輸入依存度はガスで31.8%、原油で30.6%にとどまっています。また、ロシアにとってエネルギーは重要な外貨獲得手段であり、ヨーロッパは重要なエネルギーの輸出先です。2013年のロシアの燃料輸出は3,720億ドル、そのうちEU向けは1,973億ドルと、53%も占めています。ロシアにとって禁輸は自国の経済を悪化させる行為であり、全面的禁輸は現実的ではないと言えるでしょう。

 

(出所: WITS, Crowdcredit)

 

しかし、欧州委員会はEU域内のエネルギー安全保障の強化を目指す「エネルギー同盟」の戦略案を225日に発表するなど、慎重です。戦略案の主な内容は、1)エネルギーの輸出先、供給経路の多様化、2)LNGの利用拡大、3)国際的なガス売買契約の透明性向上です。具体的には、カスピ海からのガスパイプラインの早期建設によるロシアへのガス依存の低下や、EU内でのパイプライン網の整備、ガスを供給する際にかけられる関税を各国で統一することが挙げられます。

 

ロシアによるエネルギー供給の停止は考えにくいとしても、ヨーロッパにとってロシアへのエネルギー依存の脱出は今後も課題になるように見受けられます。

 


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